太郎の国の物語/司馬遼太郎 [昭和(戦後)]
『太郎の国の物語』は、1989年にNHKスペシャルで放映された番組。
太郎とは日本のことのようだった。司馬遼太郎氏が明治維新、明治という国家を通して日本を考えるといった仕立て。
最近司馬遼太郎氏は、右翼からは昭和期を悪者扱いしていると責められ、左翼からは明治維新をほめすぎ、または、日露戦争を華々しく描き過ぎと責められ、あっという間に評価が低下しているように思う。
しかし、今考えてみると、確かに「坂の上の雲」はあまりにも日本側の状況をドラマチックにしすぎたかもしれない(その上で国際情勢に対する考慮が偏しているか、または、圧倒的に不足している)が、だからといって、そのまま手放しに褒めているわけではないと思うのだが・・・。
そもそも、氏の底には昭和期の最初の20年ぐらいの日本に対する非常に強い批判があるわけで、それでいえば、どうしてこんなに苦労して作った国をあんなにみじめな思いをさせたのだという斬鬼の念のようなものがあるというところではなかろうか。
私は、司馬さんが語る明治には上の人、権力を取った側がさっさと国家の政治体制を変革した話じゃなくて、そのいちいちの変化に振り回される人々の苦労が描かれていて非常に心を揺さぶられるものがある。夏目漱石、滝廉太郎といった人のエピソードはとりわけしんみりしてしまう。
Amazonの書評欄にも、このDVDの発売を待っていたという人のコメントがあるが、私もまったく同じ気持ち。
NHKの短い解説はここ。
トークドキュメントシリーズ 太郎の国の物語
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/library/library_taro.html
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タグ:明治
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