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BS歴史館/幕末・日本外交は弱腰にあらず [幕末]

武力で迫るアメリカの圧力に、幕府は何もできずに屈服したといわれる黒船来航。 しかし実際は、知恵と決断と交渉力で日本の主張を通していた!ペリーと渡り合った学者・林復斎は恫喝に動ぜず、その矛盾を次々と突いて主導権を常にリード。領事ハリスと交渉した幕閣・岩瀬忠震は、日本の海外飛躍の構想を実現すべく、ギリギリの応酬を繰り広げた。知られざる男たちの戦いの真実に迫る。


■ 出演者:渡辺真理、加来耕三、榊原英資、磯田道史

■ 放送日時: 2012年1月

■ 感想

幕末の日本外交については、実のところ虚像ともいうべき思い込みのストーリーが多くの人々を支配している。突如ペリーが来たので、江戸幕府は怖くて開港しちゃいました、という話だったり、江戸幕府は開国できずに、だから明治の薩長の若い奴らが頑張ったんだ、みたいな話をする人さえいる始末。

しかし現実は異なっていて、開国したのは江戸幕府だし、江戸幕府はよくよく見ていけば基本的によく対応していた。開港も別に押し付けられたからそうなったのではなく、貿易を通して豊かになるというアイデアを検討した上で受け入れているし、その際に一気になんでもオープンになんてことをすれば破滅が待っていることもわきまえて、一方的に外国人に入り込まれることの危険性を回避していこうと交渉もし、開国も順を追って対応していた。

岩瀬忠震
林復斎
といったあたりの名前が知られていないのは、日本史の教え方が間違っているだろうといったニュアンスが番組内にあったが私もそう思う。井伊直弼は無論、その後の坂下門外の安藤信正も適切で立派なお侍さんじゃないか、といった話にならないのもおかしい。総じていえば、江戸幕府の幕閣として働いた譜代大名家の人たちは優秀だったし頑張ったと言えるでしょう。

しかし現状そうはならない。それはなぜかといえば、明治維新という革命が起こってしまったからというしかないでしょう。革命政権はその常としてそれ以前の体制はすべからく劣っていなければならず、すべからく対応が誤りだったとしないとならない。そうでなければ暴力的に出て来た自らを正当化でいないから。それはあぁわかるんだけど、もういい加減、その明治革命政権をも相対化して19世紀日本を語れるようにすべきだろうなぁと思うわけですね、はい。

番組の最後の方で、榊原さんが、

岩瀬忠震と比べたら、坂本龍馬なんてチンピラですよとおっしゃっている。

私もこれに賛成。国全体を見る立場にある人の方がはるかに選択が苦しいわけで、坂本的なものは博打だと思う。しかも、悪いことには、いつのころからか江戸幕府は頑迷で対応能力がなかったので維新の英雄たちが頑張ったのだ、といったあっさりとした理解が広がっている。これは大きな誤りだ。

思うに、明治革命政権の最終形が要するに大日本帝国で、大日本帝国は敗戦と共に終わったのだから、ここを「明治朝」とでも名付けて、日本史の中で独立的地位を与えたらいいのではあるまいか。そうすれば、この時代と現代の間に断絶が見られても別にへんではない。1945年に断絶があったことを徹底しないから、復古派が跋扈するんだと覆う。


島崎藤村『夜明け前』。いろんな読み方ができるだろうが、米国ペリー来航の1853年前後から1886年までの幕末、明治維新の時代を描いたものとして非常に貴重な作品だと思う。

夜明け前 (第1部 上) (新潮文庫)

夜明け前 (第1部 上) (新潮文庫)

  • 作者: 島崎 藤村
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1954/12/28
  • メディア: 文庫





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